帳簿の効率的な付け方を経理5年以上経験者が解説【よくある失敗と対策も】

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  • 帳簿付けはなぜ必要?
  • 基本的な帳簿の付け方は?
  • 効率的な帳簿付け方法はある?

こんな悩みはありませんか?実は帳簿付けは経理部員にとって重要な仕事です。なぜなら帳簿付けは法令遵守や事業の健全性の証明、経営判断の基礎となるから。

私は新卒から経理部員で帳簿付けを3年以上経験しています。初心者のうちは帳簿付けを甘く見て失敗やミスをすることもありました…

この記事では帳簿の付け方と効率化のポイントについて実体験をもとに解説します。この記事を読むことで帳簿の効率的な付け方が分かり、日頃の帳簿付けが分かりやすくなりますよ!

結論として帳簿の付け方は以下の2段階に分かれます。

1:取引の記録と整理
  • 証憑書類の収集
  • 取引の分類
  • 仕訳の作成
  • 帳簿への記入
  • 定期的な照合
2:帳簿への記入と転記
  • 仕訳帳への記入
  • 総勘定元帳への転記
  • 試算表の作成
  • 財務諸表の作成

日頃の伝票や仕訳が財務諸表の作成へとつながっているイメージです。

執筆者情報

帳簿とは事業の収入や支出の取引を記録する書類

帳簿を付ける必要性

帳簿を付けることは企業の健全な運営と成長に不可欠です。帳簿によって記録された事業の収支をもとに様々な判断がされるから。帳簿を付ける必要性は主に以下のとおりです。

  • 法令遵守:法人税法や所得税法により事業者には帳簿の作成と保存が義務付けられている
  • 経営状況の把握:収支や資産状況を正確に把握することで経営判断に活用できる
  • 節税対策:適切な経費計上により節税効果が期待できる
  • 融資や投資の獲得:金融機関や投資家に対して企業の健全性を示す証拠となる
  • トラブル防止:取引の記録が明確になり訴訟等のリスクを軽減できる

帳簿を付けることは法令遵守のみならず、事業の健全性の証明や経営判断の基礎となります。適切な帳簿管理は経理部員にとって重要な業務です。

まめぐま
まめぐま

経理として働くなら帳簿は当たり前に付けるものです!

帳簿の法的義務

帳簿の作成と保存は法律で定められた義務。事業者は適切に対応する必要があります。帳簿の法的義務は法人税法や所得税法で規定されています。

第百二十六条 第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。

引用:e-Gov法令検索「法人税法 第百二十六条 青色申告法人の帳簿書類」

第二百三十一条 居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。

引用:e-Gov法令検索「所得税法 第二百三十一条 給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書」

また帳簿の保存期間は7年間が義務付けられています。

参考:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」

帳簿の作成・保存は法的義務として定められています。経理部員はこれを踏まえて、適切な帳簿の付け方や管理方法をマスターしましょう。

帳簿の種類と役割

主要簿の種類と特徴

主要簿は企業の会計記録の中心となる帳簿であり、主に仕訳帳と総勘定元帳から構成されます。主要簿は企業の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を行うために不可欠です。

主要簿の特徴と役割は以下のとおり。

主要簿特徴役割
仕訳帳取引を発生順に記録全ての取引を借方・貸方に分けて記録し、総勘定元帳への転記の基礎となる
総勘定元帳勘定科目ごとに取引を集計仕訳帳から転記された取引を勘定科目別に集計し、財務諸表作成の基礎となる

主要簿は経理業務の基礎となる重要ツールです。経理部員は主要簿の作成・管理能力を磨いていきましょう。

まめぐま
まめぐま

主要簿への理解は経理部員に必須です!

補助簿の種類と特徴

補助簿は主要簿を補完し取引の詳細を記録する帳簿です。補助簿は企業の財務管理を精緻化し業務効率を向上させる重要なツール。補助簿の特徴と役割は以下のとおりです。

主要簿特徴役割
現金出納帳現金の収支を記録現金残高の管理及び不正を防止する
売掛金元帳得意先ごとの売掛金を管理売掛金回収を効率化する
買掛金元帳仕入先ごとの買掛金を管理支払管理を効率化する
固定資産台帳固定資産の取得や償却等を記録適切な減価償却処理を実施する
給与台帳従業員ごとの給与支払を記録人件費管理や給与計算を効率化する

補助簿は主要簿を補完する重要なツールです。経理部員は主要簿と併せて補助簿も作成できるようにしていきましょう。

まめぐま
まめぐま

補助簿は種類が豊富なので実務ベースで覚えていけばOKです。

帳簿の記載方法の違い

単式簿記

単式簿記は主に個人事業主や小規模事業者が利用する簡易な記帳方法。1つの勘定科目のみを記録するため導入が容易ですが、財務状況の全体把握には限界があります。

単式簿記の特徴は以下のとおり。

  • 記帳が簡単:「お小遣い帳」のようにひとつの勘定科目の増減を記録する
  • 導入コストが低い:専門的な知識や高額なソフトウェアが不要
  • 法的要件を満たす:個人事業主の青色申告に対応
  • 財務状況の全体把握が困難:資産・負債の状況が不明確

単式簿記は小規模事業者にとって導入しやすい記帳方法ですが、事業の成長に伴い限界も見えてきます。経理部員にとって単式簿記の知識は小規模事業者との取引や事業の初期段階の理解に役立つ基本的スキルです。

複式簿記

複式簿記は企業の財務状況を包括的に把握できる高度な記帳方法です。「仕訳」の概念を使い、全ての取引を借方と貸方の二面から記録します。

複式簿記は確定申告時に青色申告を選択した場合に対応が必要です。一定規模以上の企業では基本的に複式簿記を採用しています。

参考:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」

複式簿記の特徴は以下のとおり。

  • 正確性:取引を二面から記録するため記帳ミスを発見しやすい
  • 網羅性:資産・負債・純資産・収益・費用の全てを把握可能
  • 分析力:詳細な財務分析や経営判断の基礎となる
  • 信頼性:金融機関や投資家からの信頼度が高い

複式簿記は網羅性が高く企業の健全な運営に必要です。一定規模以上の企業ではほぼ複式簿記が取り入れられています。経理部員は複式簿記への理解と運用能力を高めましょう。

まめぐま
まめぐま

複式簿記は日商簿記検定を通して学ぶことがおすすめです!

経理初心者でも分かる帳簿の付け方

1:取引の記録と整理

正確に帳簿をつけるためには、取引の記録と整理が重要です。取引の記録が正しくできていないと、帳簿も正しく付けることができません。

取引の記録と整理のプロセスは以下のとおりです。

  • 証憑書類の収集
  • 取引の分類
  • 仕訳の作成
  • 帳簿への記入
  • 定期的な照合
ステップ内容重要性
1証憑書類の収集領収書や請求書などの保管
取引の発生を証明
2取引の分類収入・支出・資産・負債の区分
正確な処理対応と財務状況の把握
3仕訳の作成(複式簿記)書類をもとに借方・貸方に分けて記入
複式簿記のルールに沿った対応
4帳簿への記入総勘定元帳などへの転記
財務諸表作成の基礎
5定期的な照合帳簿と実際の資産・負債の確認
誤りの早期発見

取引の記録と整理は経理業務の基礎。その正確性と効率性は企業の健全な運営のために重要です。

まめぐま
まめぐま

単純作業になりがちですが、正確な記録と整理が必須!

2:帳簿への記入と転記

帳簿の作成には正確な記入と転記が重要です。取引の記録が正確にできていても、帳簿付けで間違えると意味がないから。帳簿への記入と転記の基本的な流れは以下のとおりです。

  • 仕訳帳への記入
  • 総勘定元帳への転記
  • 試算表の作成
  • 財務諸表の作成
ステップ内容重要性
1仕訳帳への記入取引を借方・貸方で記録
取引の正確な把握
2総勘定元帳への転記仕訳を勘定科目ごとに集計
勘定科目別の残高把握
3試算表の作成勘定科目の合計・残高の確認
帳簿の正確性検証
4財務諸表の作成貸借対照表、損益計算書等の作成
財務状況の総合的把握

帳簿への記入と転記の流れは経理業務の根幹となるプロセスです。経理部員は正確な対応を心がけましょう。

まめぐま
まめぐま

帳簿がもとになって財務諸表が作成されるので超重要です!

効率的な帳簿の付け方3選

クラウド会計ソフトを活用する

クラウド会計ソフトを活用すると帳簿付けが効率的になります。手作業やExcelと比べて会計ソフトは様々なメリットがあるから。クラウド会計ソフトのメリットは以下のとおり。

メリット詳細
場所を選ばないインターネット環境があればいつでもどこでもアクセス可能
リアルタイムなデータ共有データ入力と同時に情報が共有されるため、複数人で同時に作業可能
自動化による業務効率化銀行口座やクレジットカードの明細を自動取得、仕訳を自動で行う機能などがある
セキュリティ対策データはクラウド上で厳重に管理されているため、セキュリティ面も安心

クラウド会計ソフトには多くのメリットがあります。経理部員はクラウド会計ソフトを導入している企業で働くことで効率的な帳簿付けを経験できます。

まめぐま
まめぐま

システムやツールに投資する企業かどうかは重要!

業務フローを明確にしてマニュアル化する

帳簿付けを誰でも同じ品質で対応するためには、業務フローを明確にしてマニュアル化することが重要です。

マニュアル化されることで帳簿付けのミスを減らすことができます。業務フローの明確化やマニュアル化のメリットは以下のとおり。

メリット詳細
業務の標準化による効率アップ業務フローを明確化することで帳簿付けの業務が標準化される
担当者の経験やスキルに依存しなくなるため効率的に帳簿付けができるようになる
ミスや漏れを防止マニュアル化により業務手順やチェックポイントが明確になり、見落としやミスを減らせる
教育コストの削減新しい担当者や経験の浅い担当者でも、マニュアルを参照することで業務をスムーズに理解できる
業務の可視化業務フローの可視化で帳簿付けの負荷やボトルネックが明確になり、業務改善につなげられる

業務フローの明確化とマニュアル化は帳簿付けの効率化に貢献します。帳簿付け業務のマニュアルがなければ、作成しておきましょう。

まめぐま
まめぐま

経理業務には効率化が必須ですよ!

こまめに記帳する

こまめな記帳は帳簿を効率的に付けるためにおすすめです。こまめに付けていると無駄やミスを減らせるから。こまめに記帳するメリットは以下のとおりです。

メリット詳細
正確な財務状況の把握こまめな記帳によりリアルタイムに近い形で会社の財務状況を把握できる
業務効率の向上記帳を後延ばしにすると取引内容を思い出すところから始まり、余計な時間と労力がかかる
こまめな記帳により余計な無駄をなくし業務効率の向上につながる
慣れによるミスの減少こまめに記帳することで帳簿を付ける回数が増えるため、経験値が上がりミスが減少する
問題発生時の迅速な対応会計処理の誤りや不正が発覚した場合でも、こまめな記帳により早期の発見や対応が可能になる

こまめな記帳は一見手間のかかる作業に思えるかもしれません。しかし実はこまめに記帳することは多くのメリットをもたらします。

特に帳簿を付けることに慣れていない経理部員は、日頃からこまめな記帳をすることがおすすめです。

帳簿作成の3つの方法とそれぞれの特徴

手書きでの帳簿付け

手書きでの帳簿付けは小規模事業者や個人事業主を中心に利用されている方法です。コストが低く導入が容易というメリットがある一方で、作業効率や正確性の面で課題があります。

手書きでの帳簿付けの特徴は以下のとおり。

メリット
  • 導入コストが低い
  • 特別なスキルが不要
  • 電源不要で停電時も作業可能
  • 直接記入で感覚的に把握しやすい
デメリット
  • 作業効率が悪い
  • 人為的ミスが起きやすい
  • データの分析や共有が困難
  • 保管スペースが必要

手書きでの帳簿付けはその簡便性から小規模事業者や個人事業主にとって有効な選択肢です。しかし事業規模の拡大や経営の高度化に伴い限界も見えてきます。

Excelを使った帳簿付け

Excelを使った帳簿付けは中小企業を中心に広く普及している方法です。

手書きよりも効率的で、専門的な会計ソフトよりも導入コストが低いというメリットがあります。しかしデータの一貫性や複雑な会計処理への対応には課題があります。

Excelを使った帳簿付けの特徴は以下のとおり。

メリット
  • 導入コストが比較的低い
  • カスタマイズしやすい
  • 基本的な分析が可能
  • 他のOfficeツールと連携できる
デメリット
  • データの一貫性維持が難しい
  • 複雑な会計処理には限界がある
  • データセキュリティに課題
  • 大量データ処理に不向き

Excelを使った帳簿付けは手書きより効率的なためコストをかけられない中小企業におすすめの選択肢です。しかし大量な処理や会計処理が複雑化すると、Excelだけでは帳簿作成が難しくなってきます。

会計ソフトを使った帳簿付け

会計ソフトを使った帳簿付けは多くのメリットがあります。コストはかかりますが業務効率化や正確性の向上に貢献してくれるおすすめの選択肢です。

会計ソフトを使った帳簿付けの特徴は以下のとおり。

メリット
  • 明細を自動で取得・仕訳してくれるため、手入力の手間が省ける
  • 自動計算機能により、計算ミスを減らせる
  • 売上推移や経費分析など、経営判断に必要なデータを簡単に作成できる
  • 電子帳簿保存法への対応もスムーズに行える
デメリット
  • 導入コストがかかる
  • 操作を覚える必要がある
  • カスタマイズに制限がある
  • セキュリティやデータ消失のリスク

会計ソフトを活用すると、帳簿付けを効率化できます。手書きやExcelよりも楽になるので、一定規模以上の企業だと会計ソフトを利用していることが多いです。

まめぐま
まめぐま

経理部員は経験値を増やすために会計ソフトを使っている企業で働くことがおすすめ!

帳簿と関連書類の正しい管理方法

帳簿と関連書類を保存する重要性

帳簿や関連書類の保存期間は法律で定められているものだけでなく、実務上必要な期間も考慮する必要があります。適切な保存期間を理解することは様々な場面で役立ちます。具体的には以下のとおり。

  • 法令遵守


法律で保存期間が定められている帳簿や関連書類は、適切に保存しなければ罰則が科される可能性があります。

  • 税務調査への対応


税務調査では過去に遡って取引内容を確認されることがあります。適切な書類保存はスムーズな調査対応に不可欠です。

  • 経営判断の資料


過去の売上データや経費などを分析することで、今後の事業計画や経営戦略に役立てることができます。

適切な保存期間で書類を整理・保管することで、法令遵守だけでなくその後の業務に役立ちます。

帳簿と関連書類の法律で定められた保存期間

特に重要な法令遵守に関しては、以下のように会社法や法人税法で定められています。

第四百三十二条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

引用:e-Gov法令検索「会社法 422条 会計帳簿の作成及び保存」

第五十九条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。

引用:e-Gov法令検索「法人税法施行規則 59条 帳簿書類の整理保存」

帳簿と関連書類は7年もしくは10年の保存が必要です。経理部員は法律で定められている保存期間を覚えておきましょう。

まめぐま
まめぐま

実務では法定より長い会社独自の保存期間ルールがあることも多いです。

【電子帳簿保存法】帳簿の保管・整理が楽になる法律

電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法とは帳簿や領収書を電子データで保存することを可能とする法律です。企業がデジタルデータでの管理をできるようにすることで、事務作業の合理化や経費削減を目的としています。

電子帳簿保存法の特徴は以下のとおり。

項目内容
概要国税関係帳簿書類の電子的保存を認める法律
電子帳簿、スキャナ保存、電子取引の3つの保存制度がある
目的帳簿書類の電子的な保存を認め、業務の効率化と保存コストの削減を図る
対象書類国税関係帳簿、国税関係書類(決算関係書類を除く)
保存方法電子帳簿:会計ソフトで作成した帳簿データで、電子署名やタイムスタンプの付与が必要
スキャナ保存:紙の請求書をスキャンして保存するもので、スキャナー保存制度の要件を満たすシステムの導入が必要
電子取引:電子メールで受領した請求書などで、タイムスタンプの付与や電子署名が必要
保存期間法定保存期間に従う
メリット保管スペースの削減
書類の検索・閲覧の効率化
経理業務の効率化・自動化の促進
テレワーク対応の容易化
災害時のデータ保全
デメリット初期導入コストが発生
電子帳簿保存法に沿った対応が必要
システム運用・保守の負担
電子化作業の手間(スキャナ保存の場合)
セキュリティ対策の必要性
注意点最新の法改正内容を確認する
電子帳簿の要件(真実性・可視性・完全性)を遵守する
一定の取引に関して電子署名やタイムスタンプの付与に対応する
適切なデータバックアップを実施する
定期的なシステムのアップデートやセキュリティチェックをする

参考:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」

電子帳簿保存法で帳簿の作成や保管方法が変わります。自社の導入状況に関わらず、まず概要を押さえることが重要です。

電子帳簿保存法の対応方法

電子帳簿保存法は今まで紙で行ってきた取引を電子化します。対応は大変なので慎重に以下のような流れで進めましょう。

  • 現状分析:自社の電子化状況、保存が必要な書類などを把握する
  • 対応方針の決定:電子保存の方法(自社システム、クラウドサービスなど)を選択する
  • システム導入・運用:必要なシステムを導入し運用ルールを策定する
  • 社員教育:電子帳簿保存法に関する知識やシステムの操作方法の習得を促す
  • 電子化対応:サンプルとして少しずつ電子化対応を進める

電子帳簿保存法は経理業務のデジタル化を推進するうえで重要な法律。経理部員は対応できるように全体像を理解しておきましょう。

まめぐま
まめぐま

経理業務効率化のためにも電子帳簿保存法の活用は重要です!

インボイス制度導入による帳簿付けへの影響

インボイス制度の概要

インボイス制度とは消費税の新たな申告制度のこと。仕入税額控除の要件が厳格化し、インボイス発行事業者による請求書の発行が必要になりました。インボイス制度の概要は以下のとおり。

項目内容
目的事業者間の消費税の適正な流通と納税を促進すること
仕組み事前に登録した課税事業者がインボイス制度に合った請求書(適格請求書)を発行する
要件インボイス発行事業者になるためには、申請して税務署長の登録を受ける必要がある
変更点インボイス(適格請求書)の発行義務
インボイスへの記載事項の追加
仕入税額控除の要件が厳格化
免税事業者への影響
メリット軽減税率を正確に把握できる
消費税の透明性の向上
不正取引の防止
納税プロセスの簡素化
電子インボイスによる業務効率化

インボイス制度の導入は経理業務に多大な影響を与えます。帳簿付けにも影響するので、経理部員はインボイス制度について理解しておきましょう。

インボイス制度の詳細はこちらの記事をご覧ください。

>>インボイス制度の全知識!経理部員が知るべき変更点と対応方法

帳簿付けの新しい取り扱い方

インボイス制度は帳簿付けにも影響を与えます。仕入税額控除の要件が厳格化されたため、帳簿への記載方法を見直す必要があるからです。

仕入税額控除を受けるために、適格請求書の内容を帳簿に細かく記載する必要があります。具体的な帳簿への反映例は以下のとおり。

従来の請求書適格請求書
記載内容日付、取引内容、金額など従来の記載項目に加え
登録番号、適用税率、税率ごとの金額など 
帳簿への反映請求書の合計金額を仕入として計上適格請求書の税率ごとの金額を区分して
仕入として計上

インボイス制度導入により、領収書・請求書の管理方法や帳簿への反映方法が大きく変わります。帳簿付けに関しては、より詳細な記載が必要になったことを覚えておきましょう。

帳簿付けでよくある失敗と対策

記帳の後回し

記帳を後回しにするデメリット

帳簿の記帳を後回しにすることはできるだけ避けましょう。帳簿への記帳はまとめて対応すると多くのデメリットがあるから。具体的には以下のとおりです。

  • 正確な財務状況の把握が遅れ、迅速な意思決定を阻害する可能性がある
  • 取引内容を思い出せなくなり、調査や確認に余計な時間と労力がかかる
  • 時間経過で記憶が曖昧になり、誤った勘定科目への仕訳や金額の入力ミスが増加する
  • 不正や誤りがあってもすぐに発見することが難しくなり、被害が拡大する恐れがある

帳簿を付けるタイミングだけで多くのデメリットが生まれてしまいます。

記帳を後回しにしない工夫

デメリットを回避するために、以下のように記帳を後回しにしない工夫をしましょう。

  • 日次や週次での記帳を習慣化する
  • 業務フローの見直しや自動化によって記帳時間を短縮する
  • Todoリストやリマインダー機能を活用し記帳忘れを防ぐ
  • チーム内で業務を分担して記帳の遅延を防ぐ

記帳の後回ししても良いことはほとんどありません。月1回まとめて処理といったことがないよう、ある程度こまめに帳簿付けする習慣をつけましょう。

貸借逆記帳のミス

貸借逆記帳の原因

意外によくあるのが、貸借を逆にして記帳してしまうこと。貸借逆記帳は財務諸表の数字が合わない原因となるだけでなく、会社の経営判断に影響を与える可能性もあります。貸借逆記帳が起こる原因は以下のとおり。

  • 資産・負債・純資産の関係性や借方と貸方の役割を理解していない
  • 現金取引や振込取引など取引の種類によって勘定科目や借方貸方が異なることを理解していない
  • 疲労や焦りなどにより、注意力が散漫になっている状態で記帳を行ってしまう

知識や経験不足、ヒューマンエラーなどにより貸借逆記帳は発生してしまいます。正しい帳簿付けのためにはこれらのミスを未然に防ぐ必要があります。

貸借逆記帳のミスを防ぐコツ

経理業務への理解と意識があればミスは減らせます。貸借逆記帳のミスを防ぐコツは以下のとおり。

貸借逆記帳のミスを防ぐコツ詳細
貸借対照表の仕組みを理解貸借対照表は企業の財政状態を表す表であり「資産=負債+純資産」の関係が成り立つことを理解する
複式簿記の仕組みを理解複式簿記は一つの取引を借方と貸方の両方に記載する記帳方法であり、貸借のバランスが常に一致することを理解する
取引の流れを意識して勘定科目を選択現金や預金の増減、売掛金や買掛金の発生など取引によってどの勘定科目が影響を受けるかを考える
勘定科目を理解勘定科目ごとに借方と貸方のどちらに記載するべきかを整理しておく
チェック体制を構築記帳後には必ず検算やダブルチェックを行い、誤りがないかを確認する

貸借逆記帳は正確な財務諸表を作成するために防ぐべきミスです。貸借対照表や複式簿記について理解し、日頃から正確な記帳を意識しましょう。

まとめ:帳簿の付け方は2段階!正しいプロセスを理解しよう

帳簿を付けるには「取引の記録と整理」「帳簿への記入と転記」の2段階の対応が必要です。経理部員はそれぞれどのような流れで進めるかを理解しておきましょう。

それぞれのプロセスは以下のとおり。

1:取引の記録と整理
  • 証憑書類の収集
  • 取引の分類
  • 仕訳の作成
  • 帳簿への記入
  • 定期的な照合
2:帳簿への記入と転記
  • 仕訳帳への記入
  • 総勘定元帳への転記
  • 試算表の作成
  • 財務諸表の作成

帳簿付けは単純に見えますが、重要な業務です。経理部員は基本的なプロセスを理解して習慣的に帳簿付けを対応しましょう。

経理初心者はまず基本的な仕事を覚えていくことが重要。帳簿付けを含む経理の主要な仕事内容については、こちらの記事をご覧ください。

>>経理の具体的な仕事内容

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